SV-192Sを改造する
サンバレー製のDAコンバータSV-192S.DDコンバータを内蔵していたり,出力が真空管(12AU7)のバッファになっていたりの楽しい逸品.気に入ってずっと使ってきたのだけど,少し音質の傾向を変えたくなって改造してみることにした.今回は全部で6項目の改造を行った.
SV-192Sは,DDコンバータ基板とDAコンバータ&アナログ基板の2枚構成.今回はアナログ基板側のみを改造する.基板を取り外すためには,裏面のコネクタ固定のネジと,前面パネルを取り外す必要がある.さすがキットで培ったノウハウか,すっきりした構造で分解はそんなに大変ではない.
【その1】
ひとつめの改造ポイントはこれ,出力のカップリングコンデンサ.Tk印なので東新工業製でしょうか.ポリエステルフィルム・コンデンサ.悪くはないけど,良くもない中庸の印象.高耐圧で10uFという大きなものが必要.
交換用のコンデンサ.世の中,上を見るときりがないので,そこそこの値段で買えて音質に期待できるASCのものにした.材質はポリプロピレン・フィルム.
耐圧は,元の部品は250Vだけど,実測してみると実際にかかる電圧は140V程度の模様.ちょうど200V耐圧で10uFの製品があったので,それを採用することとした.
実装するとこんな感じ.でかい,ひたすらでかい.
【その2】
SV-192Sでは,DAコンバータチップ(DSD1796)をライントランスでIV変換しつつ真空管回路に接続するという巧いやりかたをしている.そのライントランスの二次側に,たぶん高域の暴れを抑えるフィルタであろうコンデンサが付いている.これも一見ポリエステルフィルム.経験上,この形のコンデンサは良い音がしない.
手持ちに,たぶんニッセイのAPS(ポリプロピレン)と思われる同容量(3300pF)のものがあったので交換.
【その3】
DAコンバータチップ周り.なぜか,デジタル回路の電源には通常のKMG,アナログ回路の電源にはOSコンデンサが使われていた.逆じゃないかと思うのだけど,何かしら理由があったのかもしれない.
とりあえずデジタル回路用(C102)はOSコンデンサに変更.アナログ回路用は悩んだ末に今回はそのままにした.それぞれのコンデンサには,0.1uFのコンデンサを並列に付けるようデバイスマニュアルで推奨してあって,SV-192Sでもそれは守られている.ただ,使用してあったのが積層セラミック.デジタル回路用はともかく,アナログ回路にそれはなかろうってことで,すべてチップタイプのフィルムコンデンサ(PPS)に変更した.PanasonicのECHUというシリーズのもの.
【その4】
DSD1796のアナログ回路への電源供給回路.ごく普通の三端子レギュレータの回路.出力側にはニチコンの通常品の470uFが装着してあった.たまたま手持ちに,伝説のコンデンサBlackGateの330uFがあったので投入してみた.容量的に減るものの,消費電流からいって問題ないとは思ったのだけど,念のため100uFを並列に入れておいた.これは日ケミのKMG.クセがないので悪影響はないだろうとの期待.
【その5】
真空管バッファ回路への電源回路の最終コンデンサを変更.これまた,たまたま手持ちにBlackGateの350V150uFというレア中のレアものがあったので,交換してみた.
【その6】
電源トランス周辺.交流が流れる線は,ツイストさせておきたい.オリジナルはゆるく束ねただけで,しかもパネルへの信号配線といっしょくた.ここにはPWMのパルス波も流れているので,少なくとも精神衛生上よくない.
交流電源はペア同士ツイスト.パネルへの信号線はスパイラルチューブでかるくまとめて,電源ラインとは離した.
以上で今回の改造はすべて終わり.
とりあえず音楽を流しっぱなしにしてエージング中.20~30時間くらいしたら,きちんと試聴してみようと思う.数時間動かした状態では,以前より透明感と立体感が出たかな?という感じ.なにかやったあとは,良くなってるはずバイアスもかかってるので,試聴はやはりしばらくしてからがよさそう.
追記:20時間経過後の試聴
・192kHzで多少音痩せしなくなった.
・LINE OUTの音がはっきりしない.いい意味ではベルベットのようにやわらかなのだけど,個人的な趣味としては,柔らかいながらもくっきりしていてほしい.
もともとそういう傾向があって,そこを改善したかったのだけど,よけいにそちらに進んでしまった感じ.
・一方でモニター出力がとてもいい.ただしそれはボリューム最大にしてのこと.少しでも絞ると,もやつく.
・想像ではあるけど,LINE OUTでラインをドライブできていないのでないかな.普通のカナレの同軸と,管球プリなんだけど.OPアンプ入れることでそれが改善しているような感じ.
・それで,モニターアウトで聴く192kHzアップサンプリングの音は.
-透明感アップ.高音域に伸びがあるけど,決して耳障りでない.
-適度にくっきりしているけど,聴き疲れない
-中音域もまずまず良好
-低音は増えた気がする
遠藤響子 ホッチキス. ボーカルが明瞭に浮かび上がって,ピアノの少し湿った感じがよく出ている(録音時の前日は雨)
小田和正 自己ベスト. 広めの音場ときれいな高音がやわらかすぎず再生.
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このような結果で,改造はまずまずうまくいった感あり.
ただし,モニターアウトを常用するなら,OPアンプ周りもちょっと手を入れたいところ.これはまた次回に.
了